むじん図書室

オススメの本、映画、音楽、ときどき日常のことなどを語る部屋です。不定期に出没します。

【913フ】大雪物語

藤田宜永さんの「大雪物語」を読みました。

大雪物語 (講談社文庫)

大雪物語 (講談社文庫)

K町という軽井沢を舞台にした、6つの短編が収録されています。
連作短編ではなく、1つ1つが独立した話になっています。

予想しない大雪がもたらした「変化」とは…。

■転落
■墓掘り
■雪男
雪の華
■わだかまり
■雨だれのプレリュード

それぞれ6話、最後にポッと心の灯りがともるような読後感です。
雪がしんしんと降り積もり、音が吸い込まれる静寂のなか、かまくらに入っているような感覚でした。
すっぽりと、柔らかいもので包まれているような…。

どの話もすべて好きなのですが、やはり最後の話が…ぐっ、ときました。

「いつだって何度だってやり直せる」

そんなメッセージを受けとりました。

【913ミ】潮騒

三島由紀夫さんの「潮騒」を読みました。

長い間、悲恋ものだと思いこみ、手に取らなかったのですが…。
キラキラ眩しい純愛小説でした!
しかも胸キュン、ド直球✨

惹かれあう新治と初江の前には、様々な障害が立ちはだかります。
恋のライバルが、それぞれにいたりして…。

果たして2人は結ばれることができるのか。
結論から言っちゃうと…読後感は最高でした😊

それ以上いうとネタバレになってしまいますので秘密ですが、脇役たちも良い働きをします。
(特に千代子さんが好き)

話は、古代ギリシャの「ダフニスとクロエ」という物語を下敷きにしているそうで、どこか神話的でありました。
火の前にたたずむ男女の裸の肉体…などは、特に原始的な営みを感じるシーンです。

「その火を飛び越して来い」
有名なセリフですね!

舞台は歌島といって、架空の島です。
三重県の伊勢湾入口にある神島をモデルにしているそうです。

「雲が切れて、鈍い白金いろの光線が雲のはざまから落ちている」

「小さな島が、かれらの幸福を守り、かれらの恋を成就させてくれたということを。……」

なんという美しい文章…。
情景描写もつぶさで、島を愛し愛される壮大な愛も感じました。
目をつぶると、その光景が頭に浮かぶような文章が多く…うっとりと読み耽りました。

大きな自然が育む、小さな恋愛…。
太古の昔から人間が繰り広げてきた営み…。

三島由紀夫というビッグネームは一旦置いておいて、純粋に物語を楽しみました。

映画化もされているようですので、機会があったら観てみたいです。
そして、神島にも行きたいな。

【映画】80日間世界一周

1656年公開の映画「80日間世界一周」を観ました。

アカデミー賞を総ナメにしている、こちらの映画。
BGMは、誰もが聞いたことあるのではないでしょうか…ってくらい有名です。
聴くだけでワクワクドキドキ😃
私はサントラを買うほど惚れ込んでおります。
(むかし、年始のスペシャルドラマ「スチュワーデス刑事」でも流れていましたね…笑)

音楽だけでなく、
映画の内容も、とっても面白いです!!

社会改善クラブという紳士たちが集まるサロンで、自身の全財産を賭けて、
「80日間で世界一周してみせますよ!」と言いきったイギリス紳士のフォグ氏。
お伴のパスパトゥを連れて、気球に乗って世界一周の旅に出発します。

気球に乗ってるときに、山の頂上の雪を掬いとってワインボトルを冷やし、乾杯するシーンがあったのですが…
やってみたい!!と思いました。
でも高所恐怖症なので難しいかもです…(笑)


さまざまなハプニングが彼らを襲いますが、予定調和でないのも、旅の醍醐味かなと。
途中でインドのお姫様を救ったり、警察に追われてついてこられたり、といった出会いもあります。

セットが豪華絢爛だし、上空から見た自然が美しく、映像も楽しめます。
第一部の終わりには、日本のヨコハマー、カマクラーにも立ち寄ります(鎌倉大仏も出てきましたよ!)

気球、船、汽車、馬、など移動手段も面白い。
危なーい!とハラハラするところはあれど、
全体的にコメディ要素たっぷりなので、安心して見ることができます。

果たして80日以内でイギリスに戻ってこられるのでしょうか?

約3時間と長丁場の作品ですが、最後の最後まで飽きずに見ることができます。
(インターバルはありますので、休憩などはご心配なくです)

エンディングに流れるイラストのアニメーションが本当に素敵✨
何度か繰り返し見て、楽しかった旅の余韻にひたりました。

もろもろ落ち着いたら、私も海外旅行したいなぁ。

【913オ】雪の階

奥泉光さんの小説「雪の階」を読みました。

何度も挫折してきた本だったので、
読み終えたときには、自分で自分に感動!(笑)
それくらい一文が長くて、読むのに手こずる小説です。セリフも少ないですし。

でも今回は、今の自分の心情にピッタリはまったのもあったのか、途中で止めることなく、するすると約600ページを読破できました!

題名の「雪の階」に触れるのは最後の方でした。
実際にあった歴史上の事件に向かって、階段(エピソード)を一段ずつ積み上げてきたのだな、と感じるラストです。
山頂に着いて、登ってきた道を見下ろすと読んできた道程がわかるような…。
ただ、霞がかってわかりづらい景色もありましたので、近代日本史をもう少し勉強してたら、もっと楽しめたかもです。
歴史上の大事件のきっかけになりえる「思想」って、怖いものですね…。
集団になるとますます、手がつけられなくなる…。

「雪」は、降り積もる、溶ける、雪ぐ(そぞく)=排除する、などの意味を彷彿させます。
そして「清廉潔白」もありますね。
花嫁衣裳の角隠しとか。

奥泉さんは、「クワコー」みたいなダメダメなおじさんキャラを描くのが上手く、
今回も何人か、そんな俗物が出てきたので嬉しかったです。憎めなくなり、なぜか好きになってしまいます…。

主人公の惟佐子お嬢様は、何を考えていたのでしょうかね。
囲碁と数学がお好き、そして…聖女からの脱皮…。
寿子さんの気持ちに寄り添いたかったのかな、なんて読了後しばらく経ってから思いました。
もう1人の主人公…千代子さんは、当時にしては珍しい、働く女性でカッコいいです!
事件を通して恋が芽生えていく様子が、清々しかったです。

ミステリーの謎解きはもちろん、魅力的な登場人物たちの動向に引き込まれる作品でした。

最近、偶然にも文庫化されたようですね。

クワコー」と合わせてオススメいたします。

【映画】銭形平次

1967年公開の映画「銭形平次」を観ました。

前回の「ふり袖太平記」で、大川橋蔵さんのファンになり、
大川さんのハマリ役と言われている銭形平次をぜひ観たくなりました。

いやー。最高でした。面白かったー!!

賭け事(違法)をするシーンから始まり、
鳶のオニイサン、と声をかけられていたので、
おとり潜入捜査か?と思いきや、普通に牢屋に入れられてしまった…(笑)
このときは、まだ岡っ引きではなかったんですね。

なぜ、嫌がっていた岡っ引き(亡き父親の職業)になるのか?
奥方お静さんとはどういう経緯で結ばれたのか?
そして、手下である八五郎との出会いも…描かれます。
八五郎のキャラがいい! 和みました~。

推理ドラマとしても、すごく面白かった!
いろいろ伏線が張ってあったんだな、と思います。
そして、葛藤のドラマでもあります…。

と、ネタバレになるのでこれ以上は言えません🤭

極楽河岸も、雰囲気が伝わってドキドキしました。
お金が飛ぶシーンなんかも、映像で見るとさらに興奮しますね!

私の父親は「銭形平次」をカラオケで歌うとき、
銭がとぶ~🎵で、
小銭をばらまいてくれます(笑)
ご用だご用だ~!といいながら。
私もいつかは跡を継がなくては!(笑)

スカッとできる楽しい娯楽映画でした。

ドラマは全888話ということですが、地上波で再放送を希望したいです。
小説も読みたくなりました。
(積読本がまた増えてしまう…嬉しい悩みですわ…)

【913オ】薬指の標本

小川洋子さんの小説「薬指の標本」を読みました。

夢なのか…現(うつつ)なのか…。
小川さんの小説を読んでいると、水の中をたゆたうような、不思議な浮遊感を感じます。
この感覚を無性に味わいたくなるときがあるのですよね。
文章もなめらかで心地よいです。

■「薬指の標本」…短編

標本室で働くようになった私。
そこは、思い入れのあるものを標本にしたい、という人々が訪れる場所でした。
標本といっても、別れた恋人から贈られた音や…火事で負った火傷、など通常では考えられないものもあります。

よく考えると「標本」って…時間を封じられたまま生きる魔法みたいです。
うっとりと見とれてしまうときもあるけど、このままでいいのかしら…と、どこか後ろめたさも感じてしまう。

どの作品もそうなのですが、
ろうそくで灯したような童話のような温かさと、コンクリートのような無機質な冷たさが感じられ、
その2つのバランスが絶妙なのが小川洋子さんの小説の特徴かな、と思います。


■「六角形の小部屋」…短編

プールで出会ったなんの変哲もないおばさん。
妙に惹かれた私が跡をつけてみると、そこには集会所があって…。
六角形の小部屋がありました。

この話も、ありそうでないような…。
広告や宣伝もないのに人が集まる、ってやっぱり魔法がかっているなぁと思います。
主人公が眠りに落ちるシーンがとても印象的でした。

この世の誰しもがもしかしたら、自分だけの秘密の小部屋、標本にしているもの、を持ち合わせているのかもしれません。ひそかに。ひそやかに。🙊

【映画】ふり袖太平記

1956年公開の映画「ふり袖太平記」を観ました。

美空ひばりさん、大川橋蔵さん出演の時代劇。
本編が始まる前に、東映の波ザッパーンの映像が流れました。
それだけでも興奮するぅ…!

物語の舞台は、安房(今の千葉県)の館山。
悪い奴らが、密偵や女賊を使って、旗本である菅谷家の失脚と家宝の手鏡強奪をもくろみ、
挙げ句の果てには、一人娘の小浪を罠にはめます。
振袖を脱ぎ、男装して出奔する小浪。
それを追いかけて守るのは、乳兄弟の新太郎。
果たして、新太郎は小浪を救い出すことができるのか!
そして、手鏡が表す10万両のありかとは!

最初は兄妹のように、仲むつまじく浜辺で戯れている2人が、徐々に思慕の関係に変わっていくのが胸キュンでした。

美空ひばりさんは唄うときには低音ですが、
演技になると、甘ったるい可愛い声になるのが良いですね。
大川橋蔵さんも若々しい美少年で。
でも太刀さばきは素晴らしく、さすが!のひとこと。
惚れ惚れしてしまいました。

少しあらすじが難しかったのですが。
笑いあり、アクションあり、ラブあり、で。
飽きずに観ることができました。

最後はハッピーエンドの大団円なので、
気持ちも晴れやかになりました。

歌手としての大御所の美空ひばりさんしか知らなかったので、若いおきゃんな演技が新鮮でした。
当時は、二大スター共演で、さぞかし盛り上がったでしょうね。