むじん図書室

オススメの本、映画、音楽、ときどき日常のことなどを語る部屋です。不定期に出没します。

【913オ】雪の階

奥泉光さんの小説「雪の階」を読みました。

何度も挫折してきた本だったので、
読み終えたときには、自分で自分に感動!(笑)
それくらい一文が長くて、読むのに手こずる小説です。セリフも少ないですし。

でも今回は、今の自分の心情にピッタリはまったのもあったのか、途中で止めることなく、するすると約600ページを読破できました!

題名の「雪の階」に触れるのは最後の方でした。
実際にあった歴史上の事件に向かって、階段(エピソード)を一段ずつ積み上げてきたのだな、と感じるラストです。
山頂に着いて、登ってきた道を見下ろすと読んできた道程がわかるような…。
ただ、霞がかってわかりづらい景色もありましたので、近代日本史をもう少し勉強してたら、もっと楽しめたかもです。
歴史上の大事件のきっかけになりえる「思想」って、怖いものですね…。
集団になるとますます、手がつけられなくなる…。

「雪」は、降り積もる、溶ける、雪ぐ(そぞく)=排除する、などの意味を彷彿させます。
そして「清廉潔白」もありますね。
花嫁衣裳の角隠しとか。

奥泉さんは、「クワコー」みたいなダメダメなおじさんキャラを描くのが上手く、
今回も何人か、そんな俗物が出てきたので嬉しかったです。憎めなくなり、なぜか好きになってしまいます…。

主人公の惟佐子お嬢様は、何を考えていたのでしょうかね。
囲碁と数学がお好き、そして…聖女からの脱皮…。
寿子さんの気持ちに寄り添いたかったのかな、なんて読了後しばらく経ってから思いました。
もう1人の主人公…千代子さんは、当時にしては珍しい、働く女性でカッコいいです!
事件を通して恋が芽生えていく様子が、清々しかったです。

ミステリーの謎解きはもちろん、魅力的な登場人物たちの動向に引き込まれる作品でした。

最近、偶然にも文庫化されたようですね。

クワコー」と合わせてオススメいたします。